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水戸地方裁判所 昭和58年(ワ)196号 判決 1985年4月26日

原告

堺堀松男

ほか一名

被告

菅谷昭博

主文

一  被告は、原告堺堀松男に対し、金一四六万一七七〇円と、原告堺堀美代に対し、金七三万六五九五円と、右各金員に対する昭和五七年四月一八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告らの、その余を被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告は、原告堺堀松男に対し、金五三一万二九〇〇円と、原告堺堀美代に対し、金四二〇万円と、右各金員に対する昭和五七年四月一八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告らの地位

原告堺堀松男(以下「原告松男」という。)は亡堺堀弘之(以下「弘之」という。)の父、原告堺堀美代(以下「原告美代」という。)は弘之の母であり、それぞれその相続人である。

2  事故の発生

昭和五六年一〇月二五日午後二時五分ころ、被告は、普通貨物自動車(以下「加害車」という。)を運転して、茨城県鹿島郡大洋村大字上沢一八〇九番地先の交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)を大洗町方面から自宅方面に向かい左折するに際し、後方より同一方向へ進行してきた弘之運転の自動二輪車(以下「被害車」という。)に加害車を衝突させ、そのため、弘之に脳挫傷の傷害を負わせ、昭和五七年四月一七日、右傷害に基づく敗血症により死亡するに至らしめた(以下右の交通事故を「本件事故」という。)。

3  責任原因

(一) 主位的請求(自賠法三条)

被告は、本件事故当時、加害車を所有し、自己のため運行の用に供していた。

(二) 予備的請求(民法七〇九条)

被告は、本件交差点を左折するに際し、

(1) 左折の合図をしたものの時機が左折開始直前であつた

(2) あらかじめ十分左側端によることなく、左側に約二メートルの通行余地を開けたままで左折を開始した

(3) 左後方の安全を確認することなく左折を開始したという過失により本件事故を惹起した。

4  原告らの損害

(一) 医療関係費

(1) 治療費 全額填補を受けた。

(2) 診断書料 二万円

(3) 入院雑費 二三万九二〇〇円

(イ) 入院合計日数一七五日に一日あたり六〇〇円を乗じた一〇万五〇〇〇円

(ロ) 寝具賃借料 九二〇〇円

(ハ) エアーマツト・ピローポンプ代 一二万五〇〇〇円

以上合計二五万九二〇〇円を原告松男が負担した。

(二) 葬儀費

原告松男が八〇万円を負担した。

(三) 弘之の逸失利益

弘之は、本件事故当時、茨城県立鉾田第一高等学校定時制二年在学中であり、一七歳で死亡した。弘之は、一八歳から六七歳まで就労することができ、その間男子の平均賃金相当の収入を得ることができたはずであるから、昭和五〇年賃金センサス第一巻第一表による男子の平均給与額に基づき、生活費を収入額の五〇パーセント、一八歳に達するまでの養育費を一一万円として、ライプニツツ方式により中間利息を控除すると、その逸失利益は二〇四〇万円となる。

原告らは、弘之の父母として、これを二分の一ずつ、各一〇二〇万円ずつ相続した。

(四) 慰謝料

原告らが各二分の一を相続した弘之の慰謝料請求権と原告ら固有の慰謝料請求権とを合計すれば、原告ら各自につき四〇〇万円が相当である。

(五) 弁護士費用

原告松男は、原告ら訴訟代理人に対し、着手金として五五万円、諸費用(印紙、切手代、交通費、電話代、コピー代、用紙代等)として一五万円を支払い、謝金として五五万円を支払うことを約した。よつて原告松男は、合計一二五万円の損害を被つた。

よつて、原告らは、被告に対し、主位的に運行供用者責任、予備的に不法行為責任による損害賠償として、原告松男については前記4の(一)ないし(五)の損害金合計一六五〇万九二〇〇円から受領ずみの自賠責保険金一一一八万六三〇〇円を控除した五三一万二九〇〇円、原告美代については前記4の(三)、(四)の損害金合計一四二〇万円から受領ずみの自賠責保険金一〇〇〇万円を控除した四二〇万円、及び右各金員に対する弘之の死亡の日の翌日である昭和五七年四月一八日から各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1項の事実は不知。

2  同2項のうち、弘之の受傷及び死亡の事実は不知、その余の事実は認める。

3  同3項(二)のうち、(1)の左折の合図をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。

本件事故は、後記三1のとおり、弘之の一方的過失により発生したものである。

なお、本件事故現場付近の道路は、ガードレールの内側約一ないし二メートルが路側帯とされているところ、被告車は、車道外側線に寄つて左折をしたものであり、その左側に路側帯が約二メートルあつたとしても、道路交通法一七条に従つた適法な左折方法であり、原告らの(2)の主張は失当である。

4  同4項中治療費の填補の事実は認め、その余の事実は不知。

三  抗弁

1  免責

加害車は、車道外側線と中央線とで区分された通行区分帯を進行して左折の合図をした上で、外側線に寄り除行し、本件交差点を左折せんとしたものであり、既に左折態勢に入り本件交差点内に加害車の後部のみが残つていたところへ、後方より同一方向へ進行してきた被害車が追突する形で加害車の左後輪付近に衝突したものである。既に左折し終わろうとしていた被告にとつては、後方から接近してくる車両への同一方向の見通しは死角となり、発見不可能で、被告には注意義務違反はない。

結局、本件事故は、弘之が前方を進行する車両の動静に対する注意を怠つたために生じたものである。

2  過失相殺

仮に被告に過失があつたとしても、弘之の前記過失に比して極てめ小さいから、賠償額算定につき、これを斟酌すべきである。

3  損害の填補

(一) 原告らは、弘之死亡による自賠責保険金二〇〇〇万円を受領した。

(二) 原告らは、弘之の受傷による自賠責保険金一二〇万円中一一八万六三〇〇円を受領した。また、右保険金中一万三七〇〇円が、ハタミ病院に対し、弘之の治療費として支払われた。

(三) 被告は、鉾田病院に対し、弘之の昭和五七年一月一日から同年四月七日までの治療費として、一七九万七二二七円を支払つた。

(四) 昭和五六年一〇月二五日から昭和五七年四月一七日までのハタミ病院、国立水戸病院及び鉾田病院における弘之の治療費中三八五万一九三二円は、国民健康保険による医療給付金として、国民健康保険機関たる鉾田町から右各病院に支払われた。

被告は、右給付金の四割に相当する一五四万七七三円を、鉾田町からの求償に応じて支払つた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1及び2は争う。

2  同3は認める。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  原告らの地位

成立に争いのない甲第一号証の一によれば請求原因1の事実が認められる。

二  事故の発生

昭和五六年一〇月二五日午後二時五分ころ、被告が、加害車を運転して、茨城県鹿島郡大洋村大字上沢一八〇九番地先の交通整理の行われていない本件交差点を大洗方面から自宅方面に向かい左折するに際し、後方より同一方向へ進行してきた弘之運転の被害車に加害車を衝突させたことは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第六号証の一ないし三によると、弘之が、本件事故により頭部打撲、脳挫傷等の傷害を受け、その結果、昭和五七年四月一七日午後七時五六分、茨城県鹿島郡鉾田町の鉾田病院において、右脳挫傷に基づく敗血症により死亡したことが認められる。

三  被告の責任

1  被告は、請求原因3(一)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

2  ところで、被告は、本件事故は弘之の過失によるものであるとして、免責及び過失相殺の主張をするので、まず、本件事故の態様について検討する。

成立に争いのない甲第七、第九号証の各一、二、乙第三ないし第六号証及び被告本人尋問の結果を総合すれば、次の各事実が認められる。

(一)  本件交差点は、ほぼ南北に直線状に走る車道(片側一車線)幅員七・一メートル、歩道幅員(東側のみ)二・三メートルの歩車道の区別がある速度規制のない国道五一号線と、その東側方向にほぼ東西に走る幅員三・一メートルの農道的な村道とが、丁字型に交差する交差点である。右国道は、東側の車道外側線から二・二メートル東側にガードレールが設置され、その車側が歩道となつている。なお、右ガードレールは、本件交差点の北側においては、交差点から遠ざかるほど次第に車道外側線に接近し、交差点の北約三〇メートルの地点以北は、その間隔は一・〇メートルとなつており、それに対応して、歩道の幅員が次第に広くなり、右地点以北では三・五メートルとなつている。本件交差点付近の国道五一号線の見通しはよいが、前記村道の入口は、叢の陰になつて、ガードレールの切れ目等によりその存在が知れるものの、本件交差点の相当手前から一見明瞭にその存在を認知しうる状況にはなかつた。

(二)  被告は、加害車を運転して時速約五〇キロメートルで右国道を北から南へ向けて左側車線の中央付近を走行し、本件交差点に差しかかつたが、交差点の手前約二七メートルの地点において、左折の合図をするとともにブレーキをかけて時速約三〇キロメートルに減速して、そのまま進行し、交差点手前約六メートルの地点において更に時速約一〇キロメートルに減速するとともに左にハンドルを切り、ゆつくりと左折を開始した。被告は、その際、本件交差点に至るまでの間に他の車両の通行がほとんどなかつたことから、自車の後方から接近してくる車両はないものと考えて、後方の確認を全く行わないまま、しかも、右国道に交差する村道が狭い上、出入口のガードレールの間隔も小さいため、あまり左へ寄ると車体とガードレールが接触する心配があると考えて、車体左側が車道外側線から五〇ないし六〇センチメートル中央寄りになる位置から、左折を開始したものである。

(三)  一方弘之は、被害車(総排気量四〇〇cc)を運転して、前記国道を加害車の後方から制限速度を約二〇キロメートル上回る時速約八〇キロメートルで南進していたところ、前方に加害車を認めたため、その左側を追い越そうとして、車道左側車線の中央付近から左側へ進路を変えつつ進行した。ところが、弘之は、前方注視を怠つたため、加害車が左折合図を出しているのに気付くのが遅れ、本件交差点の手前約二四メートルに至つて初めて、加害車が左折を開始したことを認め、急ブレーキをかけたが、間に合わず、車道外側線の外側一・一メートルの地点において、被害車が加害車の左側面中央部付近に斜めに衝突した。

以上の(一)ないし(三)の事実が認められ、証人新妻宏行の証言中には、右認定に反する部分があるが、前掲各証拠に照らし、にわかに措信しえず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  以上認定の事実によれば、被告は、本件交差点を左折するに際し、後方の確認を全くしなかつたものである。(なお、被告本人尋問の結果中には、被告は、本件交差点手前約二七メートルの地点において、ルームミラーにより後方を確認したかの如き部分があるが、仮にそのような行為があつたとしても、後方を進行してくる被害者を全く発見しなかつたというのであるから、後方の確認を全くしなかつたものと同視して何ら差支えない。)から、後方の安全を確認しつつ左折すべき注意義務を怠つた過失があることが明らかであつて、被告の免責の主張は失当たるを免れない。特に本件においては、加害車の左側面から車道外側線まで五〇ないし六〇センチメートルの間隔があつたばかりでなく、外側線とガードレールの間に更に二・二メートルもの間隔があり(これらを合わせると二・七ないし二・八メートルになる。これは、普通乗用自動車ですらゆうに通行可能な幅員である。)、自動二輪車が四輪車を追い越す際にしばしば車道外側線の外側を通行することがあることは、左折をする四輪車の運転者の当然予見すべきことである(このような追越方法が適法な通行方法かどうかは別問題である。)から、後方の確認を怠つた過失は重大であるといわざるをえない。

更に、被告は、加害車の左側面が車道外側線から五〇ないし六〇センチメートル中央寄りにある位置から左折を開始したものであるから、あらかじめ車道の左側端に寄つてから左折を開始すべき義務に違反したことが明らかである。(なお、車道外側線より更に左に寄るべき義務はない。)。

4  しかしながら、他方、弘之にも、前記認定のとおり、速度超過及び前方不注視の重大な過失がある。したがつて、本件事故は、被告の過失と弘之の過失の競合によつて発生したものというべきである。そして、加害車と被害車の車種、道路の状況等以上認定の諸事実を総合考慮すれば、過失の割合は、被告が五〇パーセント、弘之が五〇パーセントと認めるのが相当である。そうすると、被告は、本件事故により生じた損害の五〇パーセントを賠償すべき責任を負うものというべきである。

四  損害の発生

1  医療関係費

(一)  診断書料

成立に争いのない甲第一三号証の一ないし八及び弁論の全趣旨によれば、原告松男が保険金請求等のための診断書料として一万九五〇〇円を支出したことが認められる。

(二)  入院雑費

前掲甲第六号証の一ないし三及び原告美代本人尋問の結果によれば、弘之は、本件事故のため、昭和五六年一〇月二五日から同年一二月二二日まで国立水戸病院に、同日から昭和五七年四月一七日まで鉾田病院に入院したことが認められる。

そして、成立に争いのない甲第一四号証の一ないし三、原告美代本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告松男が、昭和五六年一一月六日から同年一二月二一日までの弘之の寝具賃借料として九二〇〇円を支払い、鉾田病院の医師の勧めに従つてエアーマツト・ピローポンプを購入して、その代金一二万五〇〇〇円を支払い、かつ、その他の雑費を支出したことが認められる。そして、前記入院中に必要としたその他の雑費は、これを一日あたり六〇〇円、合計一〇万五〇〇〇円の範囲で、本件事故と相当因果関係のある支出と認めるのが相当である。

2  葬儀費

成立に争いのない甲第一二号証の一ないし一五及び弁論の全趣旨によると、弘之の本件事故死に伴い、葬式及びこれに伴う諸行事の費用として原告松男が七九万一六五〇円の出捐を余儀なくされたことが認められる。

3  弘之の逸失利益

前掲甲第一号証の一及び原告美代本人尋問の結果によれば、弘之は本件事故当時茨城県立鉾田第一高等学校定時制在学中の健康な男子であり、一七歳で死亡したことが認められるから、同校卒業時の一八歳から六七歳までの四九年間は就労可能であつたものというべく、その間を通じて男子労働者の平均賃金程度の収入を得られたものと認めるのが相当であるところ、賃金センサス昭和五八年第一巻第一表によれば、男子労働者の年間平均給与額は三九二万三三〇〇円であるから、生活費を収入の五割としてこれを控除した上で、ライプニツツ方式により死亡当時の得べかりし利益の現価を算定すれば次の計算式のとおり、三三九四万三六〇六円(一円未満切捨て、以下同様)となる。

3,923,300×(1-0.5)×(18.2559-0.9523)=33,943,606

したがつて、原告らは、右の二分の一に相当する一六九七万一八〇三円について、その請求権をそれぞれ相続した。

4  慰謝料

前掲甲第六号証の一ないし三及び第九号証の一によれば、弘之は、本件事故により前記のような重傷を負い、意識が回復しないまま、二か月後にいわゆる植物状態になり、約六か月後に死亡するに至つたことが認められ、弘之の被つた精神的苦痛は極めて大きいものがあるということができる。一方原告美代本人尋問の結果によると、原告らの長男は五、六年前から精神分裂病で入退院を繰り返していることから、原告らは次男である弘之を後取りと考えていたこと及び弘之は原告らの農業の手伝いをしていたことを認めることができ、右事情からすると原告らが弘之を失つた精神的苦痛はやはり大きいものということができる。

以上の点に鑑みれば、原告らが各二分の一を相続した右弘之の慰謝料と原告ら固有の慰謝料とを合計して原告らの慰謝料は各六〇〇万円とするを相当と認める。

5  過失相殺

原告の主張に係る損害は以上のとおりであつて、本件事故により原告松男の被つた損害は合計二四〇二万二一五三円、原告美代の被つた損害は合計二二九七万一八〇三円となる。これに前判示の五〇パーセントの過失相殺を行うと、原告松男の損害は一二〇一万一〇七六円、原告美代の損害は一一四八万五九〇一円となる。

五  損害の填補及び弁護士費用

原告らが弘之死亡による自賠責保険金二〇〇〇万円を受領したことは、当事者間に争いがない。したがつて、原告らの前記損害中各一〇〇〇万円は、これにより填補されたものであることが明らかである。

次に、原告らが弘之の受傷による自賠責保険金一一八万六三〇〇円を受領したこと、右保険金一万三七〇〇円がハタミ病院に対し弘之の治療費として支払われたこと、及び被告が鉾田病院に対し、弘之の昭和五七年一月一日から同年四月七日までの治療費として、一七九万七二二七円を支払つたことは、当事者間に争いがない。これらは、原告らが本件訴訟において請求していない損害について支払われたものであるが、前判示の過失相殺率からすれば、その五〇パーセントは、原告らの前記認定の損害に填補されるべきものであるというべきである。そうすると、原告らの前記損害中、右の合計二九九万七二二七円の五〇パーセントに相当する一四九万八六一三円の二分の一の七四万九三〇六円が、それぞれ填補されたものというべきである。

これに対し、国民健康保険による医療給付金が支払われたこと及びそのうち四〇パーセントについて被告が求償に応じたことも当事者間に争いがないが、右給付金ないし求償金は原告らに生じた損害を填補すべきものということはできないから、これらをもつて、原告らの損害額を減額すべきものではない。

以上のとおり填補のあつた額を差し引くと、結局、被告の賠償すべき原告松男の損害は一二六万一七七〇円、原告美代の損害は七三万六五九五円となる。

そして、原告美代本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告らが原告ら訴訟代理人に本件訴訟に関する行為を委任し、原告松男において原告ら主張の着手金等を支払い又は支払うことを約したことが認められる。そのうち、本件事故と相当因果関係がある損害として被告に負担させるべき額は、前記被告の賠償すべき損害額、本件事案の内容、本件訴訟の経過等諸般の事情を考慮すれば、二〇万円と認めるのが相当である。したがつて、これを原告松男の損害に加算すると、結局、被告の賠償すべき原告松男の損害は、一四六万一七七〇円となる。

六  結論

以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、原告松男については一四六万一七七〇円と、原告美代については七三万六五九五円と、これらに対する本件事故により弘之の死亡した日の翌日である昭和五七年四月一八日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の部分は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大橋寛明)

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